渡辺淳一 「孤舟」 (集英社文庫)

渡辺淳一 「孤舟」(集英社文庫)を読みました。

定年を迎えたサラリーマンの姿を描いた作品で話題になりました。思わず、苦笑する場面も
沢山出てきますが、おそらく多くの実態はこうなのでしょう。内容と感想をまとめました。

主人公、大谷威一郎は、大手広告会社の役員まで登りつめて定年退職した、元猛烈
ビジネスマン。
今は、朝起きても何もすることがない・・・趣味もなく時間を持て余す毎日の繰り返し。
食事は3食とも奥さんの手料理、家事は一切手伝わず、当たり前のように現役時代と
同じ態度で生活を続けようとするが、奥さんはストレスがたまり、大げんかの末、
ついに家を出て行ってしまう。一人になった主人公は、デートクラブに入会し、若い
女性とアバンチュールを楽しもうとするが・・・

定年退職後の急激な環境変化を受け入れられず、地位や肩書といった過去のプライドに
しがみつき、なかなか捨てさることができない主人公。しかし、家族とのいさかいや
日常での出来事や出会いをきっかけに、自分から変わらないといけないことに気付き、
新たな歩み出します。

「すべてが変わった以上、自分も変わらなければ生き辛くなるだけである。」
「どれだけやれるか分からないが、とにかくいまから一歩踏み出してみよう。
すぐ駄目にになるかもしれないが、まず変わるのだ。」

この小説に描かれている定年退職者像は、時代的には少し古いモデルになのかなと
思いますが、定年退職後、地位も肩書も部下もいなくなり、裸になった自分とどう
向き合うか、この課題は今も変わらないとと思います。
妻や家族との関係性の変化、新たな人々との交流などのから得られる気付きをもとに、
新たな環境に自分を適合させて、その中で生き甲斐を自分で再構築していく姿勢が
定年世代の基本的な心構えとして必要になるということですね。
変化を先取り、徐々に自分を変えていくことができれば、理想かも知れませんが、
やはり主人公のように、現実に直面して、変化と自分のギャップを経験して初めて
自分なりの定年後の生き方をつかみ取ることができるのかもしれません。

自分はこんな主人公とは違うぞと思いつつ、やや軽い気持ちで読み始めた小説でしたが、
読み終わってみると、定年後3年かかっても、自分に正直に変化を受け入れることができた
主人公に共感しました。

お終いに気付いたことを。
… この小説の中で、一度家を出た妻が後半で戻ってきますが、理由がよく分かり
ませんでした。夫婦のことは夫婦の間でしか分からない、長年培われた絆が
あるということでしょうか?

 

 

 

 

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